社会福祉法人 調布市社会福祉事業団 なごみ そよかぜ すまいる まなびや ちょうふだぞう すこやか すてっぷ あゆみ


理事長便り
2013/5/1(水)

 桜の季節が過ぎ、施設周辺の桜の樹もすっかり緑になっています。新緑の季節を迎えた田畑や野山も緑色に染まってきました。古代の時代、「みどり」は色の名ではなく、草木の新芽や若葉そのものを指した言葉だったそうです。時が流れていくなかで、新芽、若葉の色を「緑色」と指すようになったようです。昔の方には、赤子を「みどりこ」という言い方もあるようでしたが、これも「新芽のように初々しい子」の意味のようで、古代の名残でしょうか。
 先月の20日は長野や東北地方に思いがけない雪が降り桜の花も雪が重たそうに枝が垂れ下がっていました。青森や秋田地方では,ようやく4月29日にソメイヨシノの開花が発表されましたが、梅の開花は発表されていないようです。東京も風が強かったり寒気が入って寒い日に戻ったりと、冬物の洋服を着たりしていましたが、先日、心地よい爽やかな風に誘われて、我が家の近くを歩いて出かけました。風が気持ち良い、ただのんびりといろいろな風景を見ながら楽しんでいたい。百草園の丘陵も芽吹きが過ぎ、霞がかかって見えていた丘陵も、ほんのり淡い緑色の木々となり日々輝きを増してきています。それぞれの玄関先や庭には春の花が競うように色とりどりの花を咲かせて目を楽しませてくれています。「3月の風と4月の雨が5月の花々を咲かせる・・・」英国で伝え受け継がれている童謡(マザーグース)にもあるように、3月の風と4月の雨の季節があるから、それを過ぎると美しい5月になって、一斉に芽吹いていた新緑の黄緑色がすがすがしい快い気持ちをもたらし、色あざやかな花々を咲かせてくれる。北海道、東北の震災地からも桜や新緑の便りが届いています。緑は生きる力、生命の証し、花は人の気持ちを穏やかにしてくれます。
 今年も鯉のぼりが庭やマンションのベランダに、子どもの成長を願って・・・。もう鯉のぼりの季節、月日のたつのが早すぎる感じです。東日本大震災で津波に襲われ、多くの方が犠牲になった福島県南相馬市原町区萱浜(かいばま)では、2011年4月の下旬から一匹の鯉のぼりが津波で流された八津尾さんの屋敷の跡地に泳いでいます。地震が起きた時、畑で八津尾さんはブロッコリーの手入れをしていました。萱浜はなだらかな海岸線で、地震が起きても三陸と違って津波のことなど皆あまり心配したことがなかったそうです。だが目に映ったのは思ったこともない恐ろしい巨大津波でした、あわてて車に乗り、自宅にいる孫たちを自分の車に乗せ、後ろの車には妻が近所に住む親戚の老夫婦を乗せて2台で逃げた、八津尾さんは襲ってくる津波をバックミラーで見ながら妻の車を確認して道路を曲がったが、後ろを確認したときは妻の車は消えていた・・・。震災時、この地区は46人の方が犠牲になって内16人の方が行方不明のまま。集落で農業を担っていた4家族の内3家族を失って八津尾さんだけが残った。津波も地震も自然災害だから仕方がない、原発事故も自然災害と思って折り合っていくしかない、ずっと農業一筋でやってきた自分は自然と共生するしか農家に道はないとお話しています。八津尾さんのお宅は屋敷林に囲まれた大きな屋敷でしたが津波で跡形もなく消えてしまい、海風が通り抜ける更地となってしまいました。集落の住民の方16人が未だ行方不明、更地の向こうに見える海にのまれてしまったのでしょうか。「鯉のぼりを目印に、1日でも早く海から戻ってほしい」と思って、山から木を伐り出して一人で更地に鯉のぼりを立てたそうです。鯉は震災の翌月からずっと風に泳いでいます。
 ゴールデンウィークも前半が終わりました。休みでなくお仕事をされている方も多いかと思います。事業団の入所施設なごみの利用者の方の中には、ご家族が施設に見えて楽しい時間を過ごしたり、一時帰宅して家族の方と過ごす方もいます。ご家族の高齢化や様々な事情の中で、徐々に帰宅されない利用者の方も増えてきました。利用者の方の中には「なぜ帰れないのか?」の理由が分からずに不安定になったり、家に電話をしたりする方も見受けられます。職員も利用者の皆さんが明るく笑顔で安心して穏やかに施設で過ごせるよう寄り添って支援しています。
                          理事長 中根義雄




 
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