「震災からご両親の体調が優れないという中,家族と離れて,ご利用者の避難先の近くのアパートに住み,休みの日は仮設に住むご両親に会いに,往復6時間かけて通っているという職員さんの話を聞き,自分だったらできるのだろうかと胸が痛みました。」
「被災して半年が経つが,復興にはまだまだ時間がかかるであろうと肌で感じた。職員の方も「忘れられることが一番怖いし,ボランティアも減ってきている。是非,また,足を運んでほしい。」とおっしゃられていた。」
これは,能登半島地震支援に自ら手を挙げ派遣された当事業団の職員が,現地の福祉施設職員との対話を通じて感じたことを報告書に記したものです。
復旧もままならない能登半島地域では,この9月にも豪雨による大きな被害を受けました。このような被害に対し,当事業団では,厚生労働省の被災した施設への人的な支援の枠組みなどを活用し,震災発生後の1月19日から10月までの間に,延べ15名,計111日にわたり職員を被災地へ派遣しています。派遣先は「1.5次避難所」として設けられた「いしかわ総合スポーツセンター」,支援のハブ拠点である「社会福祉法人佛子園輪島KABULET」,障害者支援施設「石川精育園」,特別養護老人ホーム「第二金沢朱鷺の苑」など,多岐にわたります。派遣職員は,障害者や高齢者の生活介助,仮設住宅への訪問や相談業務に従事し,福祉職として被災者に寄り添った支援を行い,近い距離感でのきめ細かな対応ができたとの報告がありました。
また,この被災地への職員派遣に関しては,事業団内で報告会を開催し,災害時の対応や被災者支援の課題について情報共有を図りました。これまでの派遣実績からも明らかなように,震災直後の急性期においては,医療職や警察・消防,自衛隊などの活動が中心となりますが,その後の復旧過程においては,避難所や仮設住宅における要支援者の介助や,被災した福祉施設の復旧支援,特に長期にわたる人的支援の重要性を改めて認識する必要があります。
当事業団では障害福祉サービスを実施している施設において災害時事業継続計画(BCP)を策定し,利用者支援に当たることとしておりますが,職員自身が被災者となった場合の対策も含め,より具体的な対応を構築しておかなければなりません。そのためにも,事業団内相互の応援体制の構築はもとより,外部の職員やボランティアの業務範囲や内容を事前に定め,受援体制を整備することが不可欠です。
8月8日に発生した日向灘沖地震に伴い,気象庁は南海トラフ地震に関する臨時情報を発表しました。また,南関東地域においては,今後30年間でマグニチュード7級の地震が発生する確率が約70%と推定されております。いずれにしても,震災への備えは急務です。
今回の職員の被災地での活動を通じ,我々は多くの学びを得ました。この貴重な経験を,今後の施設運営における持続可能な災害対策へと反映してまいりたいと考えております。
最後に,支援先である石川県精育園の理事長より,丁重なお礼の書面を頂戴いたしました。被災地で奮闘された職員に対し,敬意と感謝の意を表し,改めてお疲れ様でしたと申し上げます。
伊藤栄敏