調布市は本年,市政施行70周年という大きな節目を迎えました。昭和30年(1955年)4月1日,調布町と神代町が合併し,調布市として新たな歩みを始めて以来,このまちは,都心に近接しながらも豊かな自然環境に恵まれ,暮らしやすいまちとして着実に発展してまいりました。人口は,当時の約4万5千人から現在では24万人を超え,今なお増加傾向にあります。なかでも,誰もが安心して暮らせるまちづくりの基盤として,福祉サービスの充実が重要な役割を果たしてきました。
調布市では,高度経済成長期を経て都市基盤を整備する過程において,国の福祉政策との連動のもと,高齢者・障害者への支援,子育て支援,生活困窮者への支援など,多様な地域福祉サービスを推進してまいりました。しかしながら,このような福祉の充実は,行政の力のみでは到底実現し得るものではありません。むしろ,それぞれの立場から地域に根ざした活動を地道に重ねてこられた多様な主体の尽力こそが,その礎を築いてきたのだと,あらためて深く感じております。
先日,社会福祉法人六踏園の創立100周年記念式典にご招待を受け,参加させていただきました。3年前に開設された「地域交流センターまんまる」では,行政関係者,福祉関係団体,地域住民の皆様,さらには調布学園を巣立った方々など,多くの方々が集い,地域に根ざした福祉の歩みを共に祝う姿が印象的でした。六踏園は,大正14年に調布町に設立された調布農場を源流とし,教育・福祉・医療の三本柱を掲げ,百年にわたり地域の子どもたちの健やかな成長を支えてこられ,今や地域に欠かすことのできない存在です。
また,明治33年に私立幼稚園を麹町で開設し,昭和22年に上石原へ拠点を広げられた社会福祉法人二葉保育園は,児童養護施設や母子支援をはじめ,今日ではグループホームなども展開され,家庭的な環境の中で子どもたちに寄り添う支援を継続されています。
さらに,昭和47年の人口急増期に創設された精神障害者授産施設「新樹会創造印刷」は,現在「創造農園」として就労継続支援B型事業を運営し,精神に障害のある方々の「働きたい」という思いに応える支援を,50年以上にわたり続けてこられました。
こうした社会福祉法人は,市内に41法人(調布市社会福祉法人地域公益活動連絡会調べ)を数え,各法人が地域の特性や課題に応じた取り組みを展開し,地域福祉の推進において極めて重要な役割を果たしておられます。
近年では,介護保険制度の施行以降,民間企業による介護・障害・児童福祉分野への参入も進み,柔軟性と専門性を活かした効率的なサービス提供によって,多様化・複雑化する福祉ニーズへの対応が期待されています。
また,地域に根ざしたきめ細かな支援を行うNPO法人の存在も欠かせません。とりわけ,当事業団設立の礎ともなった「調布心身障害児・者親の会」は,昭和43年に「あゆみ教室」を開設し,平成21年にはNPO法人化。現在では,就労継続支援B型や生活介護など多様な事業を展開し,当事業団とも連携を重ねながら,障害福祉の充実に貢献しておられます。
このように,調布市における地域福祉の歩みは,行政のみならず,社会福祉法人,NPO法人,民間企業,そして地域住民一人ひとりの思いと行動が重なり合い,継続的に積み重ねられてきた結果にほかなりません。
当事業団は,平成11年の設立以来,まだ20余年という若い法人ではありますが,これまでの歩みに感謝しつつ,多様な主体としっかりと手を携え,地域全体の福祉力の向上に向けて,今後もなお一層努めてまいります。
理事長 伊藤栄敏