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やっと秋の気配が感じられようになってきましたが,今年の夏(6月から8月)の日本の平均気温は,過去30年の平均を2.36度上回り,1998年の統計開始以来,最も高いものとなったと気象庁が9月に入り発表しました。国内の最高気温は群馬県伊勢崎市で8月5日に41.8度を記録し,観測史上1位を更新しました。2007年に正式な予報用語となった「猛暑日(最高気温35度以上)」も,今年の東京では6月17日と,例年より早く訪れました。今では,日本の夏は早く始まり,秋になっても暑さが収まらず,四季の中で夏だけが長くなっているとも言われています。

私が子どもの頃の感覚では,雷が鳴ると梅雨が明けると言われ,7月20日ごろに雷雨を合図に夏が訪れました。青空の下,夏休みに入ると友人と近所のプールに通い,日焼けした肌を競い合ったことが,いまでも鮮やかな記憶として残っています。セミの声もまた,季節の移ろいを告げる大切な存在でした。ニイニイゼミが鳴き始めると夏の訪れを感じ,ミンミンゼミやアブラゼミの大合唱が夏の盛りを知らせ,夕暮れ時にはヒグラシがその日の終わりを伝えてくれました。8月の後半にツクツクボウシの声を聞くと,楽しかった夏休みの終わりを少し寂しく思ったものです。

しかし近年は,都市化や異常気象の影響もあり,セミの声を耳にする機会が減ってしまいました。子ども時代の夏の風景が失われつつあることに,一抹の寂しさを覚えます。だからこそ,現代を生きる子どもたちにも,猛暑に適した環境のもとで,季節を感じ,思い出に残る夏を過ごしてほしいと願っています。

この夏,市から受託運営する「子ども家庭支援センターすこやか」や各学童クラブを訪ねました。「すこやか」は,「屋根のある公園」をコンセプトとし,猛暑の中でも子どもたちが安全に遊べる貴重な場所となっています。最近では小学生も含め夏休みには多くの来館者が訪れ,小学生向けの遊具の提供も広げています。連日,SNSで混雑状況を流すほどの盛況ぶりでした。また,8月の夏まつりには,500人を超える来館者があり,神輿や盆踊りなど季節の風情を味わうプログラムを楽しみました。

夏休みの学童クラブは朝8時からの一日育成です。100人を超える施設もあり,外遊びが難しい中でも,体育館や育成室でのドッヂビー,一輪車,ラジオ体操などを取り入れ,室内で体を動かす機会を工夫しました。さらに,うちわや風鈴,紙コップ花火の工作,夏祭りでは,職員手作りのスイカ割りやシロップかけ放題のかき氷,ヨーヨー釣りなど季節の風情を楽しみました。一方,時には暑い中でも近隣の広場に出かけ虫取りや鬼ごっこに挑む子どもならではの姿も見られました。夏休み企画としての親子交流会では,日頃,練習を積み技を磨いてきたコマやけん玉を誇らしげに親に自慢する微笑ましい光景が見られました。また,親子遠足では多摩動物公園ナイトズーに出かけた施設もありました。このように各施設では,子どもたちが「夏らしさ」を五感で味わえる企画を展開するなど,猛暑という新たな現実を受け止めつつ,子どもたちが安全に,そして存分に夏を感じられる育成環境を整え,心豊かな思い出を育めるよう工夫しています。また,並行して児童自らが企画する秋の児童館まつりの準備も進めました。

子どもの頃に体験した四季折々の出来事は,大人になっても心の糧となります。当法人では,限られた環境の中ではありますが,四季の移ろいを体験し,学びや遊びを通じて子どもの豊かな成長をサポートして参りたいと考えています。

理事長 伊藤栄敏