今年の冬は,日本海側では災害級の大雪,一方太平洋側の東京では乾燥した冬晴れが続いています。そのような寒さの中,なごみの正面玄関前には,パンジー,ビオラ,スイートアリッサムが可憐な花を咲かせ,私たちの生活に彩りを添えてくれています。

これらの花々は,昨年11月末,すずかけの葉が黄金色に染まる小春日和の暖かな日に,なごみの利用者の皆さんと共に植えたものです。長靴に履き替え,手袋を身につけ,それぞれがスコップを手に,丹念に花壇に苗を植えていきました。ポットからそっと苗を取り出し,掘り起こした土に一つひとつ丁寧に植える様子は,心温まるものでした。少し遠い場所には,体をいっぱいに伸ばして植えたり,花壇の中に入って次々と作業を進めました。そして最後には,「きれいな花が咲きますように」と願いを込め,皆で記念撮影を行い,笑顔と共に作業は無事終了しました。「お花がたくさんできれいになった」「お花を植えるのは楽しかった」「ありがとう」と,皆の満足そうな声が聞かれました。

土に触れることには,癒しの効果があり,心にも良い影響を与えると言われています。現代ではコンクリートに囲まれた生活が日常となり,多くの人にとって「土」が遠い存在になっているかもしれません。私たちの事業団では,日常的に散歩や外出を通じて自然に触れる機会を大切にしています。また,利用者のご家族が育てた農園の野菜を,利用者の皆さんが収穫する体験も行っています。昨年の秋には,サツマイモ堀を行い,皆でその味を楽しむひと時を過ごしました。

こうした自然に触れる活動を取入れながら,私たちは季節ごとの行事にも積極的に参加しています。お正月には近隣の神社への初詣に出かけ,春にはお花見やわかばの会でのミニ運動会,そして広場でのお弁当を楽しみます。夏祭りでは,浴衣や甚平を着て射的やヨーヨー釣り,焼きそばやかき氷といった夏の風物詩を味わいます。秋には援護施設中心に法人全体で行う「すずかけフェスタ」で,ステージ発表や作品展を通じて日頃の努力の成果を披露します。

一年を通じて,私たちはできる限り自然に親しみ,季節感を大切にした運営を心がけています。施設内の生活が多くなりがちな日常においても,利用者一人ひとりがその人らしい生活を送れるよう,職員と共に工夫を重ねています。

やがて春の柔らかな日差しが増え,桜が満開を迎えた後,施設周辺の緑が一斉に芽吹く頃には,パンジーから夏の花々への植え替えが待っています。その日にはまた,利用者の皆さんと共に土に触れ,汗を流したいと思います。
なお,今回のパンジーの花苗は,調布市内で四季折々の花苗や野菜苗を育てていらっしゃる小林園芸さんから,大変お安く譲っていただきました。心より感謝申し上げます。

理事長 伊藤 栄敏

2月理事長便り←こちらからも内容ご確認いただけます。