私が本事業団の理事長に就任してから,早くも一年の歳月が流れようとしています。
この一年間,多くの貴重な出会いがありました。「すこやか」での夏祭りでは,子どもたちの澄んだ瞳の輝きに心を打たれ,秋の「すずかけフェスタ」では,全身でリズムを楽しむご利用者の満面の笑顔に深い感動を覚えました。また,春の「通園あゆみ事業」の卒園式では,成長した子どもたちの姿に胸が熱くなり,彼らの未来が幸福に満ち溢れていることを願いました。また,毎朝の出勤時には,「なごみ」の皆さんから温かい「おはようございます」の挨拶をいただき,毎朝の挨拶が,私の日常に深く根付いていることを実感しています。
もう一つ,私の日々の楽しみとなっているのが,「すまいるパン」の味わいです。週に二,三度は昼食としていただき,特に「海老カツバーガー」と「クリームパン」の組み合わせは私の定番のお気に入りです。また,三色パンやチーズ入りカレーパンを金曜日に購入し,週末の朝食として味わうことも私の習慣になりました。
この美味なる「すまいるパン」は,調布市知的障害者援護施設「すまいる」において,施設の利用者の皆さんが,粉の軽量,パン生地の成形,分割,丸め,餡詰め,袋詰めやシール貼り,さらには製造後の洗浄まで,職員とともに一つひとつ丁寧な作業工程のもとに製造されたものです。
日々の製造数は,食パン約30斤,ロールパン約260個にのぼり,「ちょうふの里」や「なごみ」への毎日の配達をはじめ,特別養護老人ホームや保育園にも数回届けられています。また,菓子パンや総菜パンは一日約400個製造され,近隣の大学やスポーツ施設,金融機関,市役所などで販売されており,中でも調布駅前の保険会社では,社員向けに月曜から金曜まで毎日販売され,年間数百万円にのぼる売上を記録するなど,「すまいるパン」は市内外の企業や地域の皆様に広く親しまれています。
パンだけではなく,クッキーやパウンドケーキ,マフィンなどの焼き菓子も製造しており,多くの方々にご好評をいただいています。特に,季節や行事に合わせた特注品の製造にも力を入れており,クリスマスや卒業式シーズンには贈答用として多くのご注文をいただいています。もみの木や星形,桜の形をしたクッキーは特に人気の高い一品です。これらのパンやお菓子は,国領駅近くにある「ちょうふだぞう」内にある「ベーカリー&カフェ ほっとれ~る」でも販売されており,地域の方々がコーヒーやジュースを片手にくつろいでいらっしゃいます。
援護施設「すまいる」では,障害者総合支援法の就労B型事業等を展開しており,現在32名の利用者が,パンの製造等に日々取り組んでいます。
パンづくりに最も大切な材料の軽量を誤差なく行う方,パンづくりコンテストにも参加した技術できれいに素早く丸くする方,接客を得意とし出張販売を楽しみにしている方など,それぞれが持ち味を活かし,生き生きと活動しています。
こうした作業により得た利益は,工賃として利用者に還元され,働く喜びと自己実現へとつながっており,高齢になっても作業内容を調整しながら,長くこの場に通い続けたいと願っておられる様子に,この事業の意義深さを改めて感じています。
私たち事業団は,「働くことの喜び」や「社会とのつながり」の場をできる限り多く創出することにより,障害の有無を超えて,誰もが共に生きる共生社会の実現を目指しています。今後とも,ご利用者の皆様一人ひとりの思いに寄り添いながら,さらなる事業の充実と発展に努めて参ります。
なお,「すまいる」ではパンや各種焼き菓子のご注文を随時承っております。皆様のご来店を心よりお待ち申し上げております。
理事長 伊藤栄敏